要旨:
- 一般に農地所有者というと「米作を中心に生計をなす昔ながらの純朴な農家」をイメージしがちである。残念ながら、それらの印象は、現実とかけ離れている。
- 日本の稲作農家は200万戸以上あるが、稲作を主な収益源にしている農家は8万戸に過ぎない。残りの圧倒的多数は、細々と農業を続ける振りをしながら、真の狙いは農外転用による「濡れ手に粟の収入」を狙っている農家だ。いわば「偽装農家」だ。
- 農地を相続したもののすっかり耕作意欲を失った「土地持ち非農家」も120万戸ある。不動産業者や産業廃棄物業者などと組んで、転用目的で農地を利用しようと画策する例は後を絶たない。
- 「偽装農家」は、転用機会に備えるため、農地の貸し出しよりも耕作放棄を選択する。農地への相続税の優遇もそれに拍車を掛けている。
- 非営農目的での農地の所有や利用が蔓延している。これが真の問題である。
- 今年6月に成立した改正農地法には大きな問題がある。今まで「偽装農家」の利益を考えて、不正な農地転用に見て見ぬふりをしてきた農業委員会に権限を与えている限り、ことが変化するとは思えない。むしろますます農地の不正利用が進むおそれが強い。
- 真の問題はコメの慢性的な生産過剰にある。
- 一般に農業をことさら「美化」する風潮があることを筆者は危惧する。農業の実像は、地権者がエゴを隠さず農地利用者がモンスター化し、農地行政もそれを見て見ぬふりをする悪循環に陥っている。これを何とかしなければ、農業全体の衰退のみならず国土全体の荒廃を招く。
- まずは現状把握に傾注するべき。真っ先にすることは「平成の検地」だ。日本には農地利用を記録するための法定台帳が存在しない。これが違法脱税行為の温床となっている。
- このような状態が放置されている限り、日本の土地利用の秩序回復はない。
いやあ、よく言った、神門善久。ニッポンの衰退の根本原因は、狭い日本の土地利用で、すさまじいばかりの地権者エゴが渦巻いていることにある。ヒャクショウ地主のエゴを何とか抑えない限り、日本の将来はない。
2 件のコメント:
やはり、この記事について書かれましたね。ちょっと前の散人さんのコメントで”農家と農協は同じなんじゃないの?”とのことですが、仰るとおり、この神門さんの云う偽装農家も含め、同じアナのなんとやらですよ。農協を嫌う”立派な”独立心あふれる農家もあるじゃないか、と言われそうですが、そうした農家が成り立つのも、農協様の高価格維持の政治力の賜物。遠州灘に延々と続く工業用地転用狙いの農地に愕然としたことがあります。20年くらい前ですが。
田舎から都会に出てきて独立し、苦労してようやく事業に成功したけれど、故郷に錦を飾ろうと思って田舎に帰ってみると田圃を耕していたアホ兄弟の方がよほどお金持ちになっていた、というのはよく聞く話ですね。
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